四国の職人が心に響く手仕事で仕上げる
オーダーメイド納経帳・御朱印帳「千年帳」

「千年帳」オンラインショップ
facebook twitter instagram
facebook instagram twitter

千年帳プロジェクトサポーター・有吉正明インタビュー

オーダーメイド納経帳・御朱印帳「千年帳」のプロジェクトサポーターで高知県立紙産業技術センターの研究員・有吉正明の高知県の紙産業の発展にかける想い、土佐和紙の技術や特徴、千年帳の開発・制作の経緯などをインタビューしました。

スポンサーリンク



 

 

千年帳制作チーム

オーダーメイド納経帳・御朱印帳「千年帳」は、それぞれの専門技術を持つ四国の職人が、最高品質の納経帳・御朱印帳を仕上げるために長い期間をかけて試行錯誤し、開発した商品です。
四国内を拠点に活動する様々な分野の専門家が集まって結成された千年帳制作チームのメンバーは、現在の活動分野に関わることになったルーツやストーリーがそれぞれに存在し、活動分野へのこだわりや想いをもって取り組んでいます。
活動状況や千年帳にかける想いなどをぜひ広く知っていただきたく、メンバーが自分の声でお伝えするべく、インタビュー動画を撮影しました。

千年帳制作チーム
千年帳のメイン素材である「土佐手漉和紙」が生み出される高知県の仁淀川にかかる沈下橋で、千年帳制作チームのメンバーを撮影しました。

 

 

高知県立紙産業技術センター研究員・有吉正明

本記事では、千年帳のプロジェクトサポーターで高知県立紙産業技術センターの研究員・有吉正明(ありよしまさあき)のインタビュー内容をまとめていますので、高知県の紙産業の発展にかける想い、土佐和紙の技術や特徴、千年帳の開発・制作の経緯などをぜひご一読ください。
インタビューの様子は、以下の動画でも閲覧可能ですので、あわせてご覧ください。

 

 

 

 

高知県立紙産業技術センターの研究員の仕事

高知県は昔から製紙業が盛んです。その歴史は1000年以上前の和紙の生産から始まり、現在は製紙会社、紙の加工会社、さらに紙から発展したマスクやオムツに使われる不織布を製造しているメーカーなど紙に関連する企業が高知県内には約35社あります。手漉き和紙を漉いている工房も20工房弱あります。
そういった企業や手漉き和紙工房を支援するのが私の所属する高知県立紙産業技術センターの主な業務です。具体的な業務内容は主に次の4つです。

 

1. 紙・不織布の試験研究を行う業務
2. 紙・不織布を企業から預かり、分析し、報告書を作成する依頼試験業務
3. 紙・不織布のメーカーからのいろいろな相談に対応する技術相談業務
4. 紙・不織布に関する研修や講演会などの情報発信・人材育成業務

 

私は特に3つめの技術相談業務に対応することが多く、製紙会社や和紙を作る職人さんが日々相談に来られます。
例えば、こんな製品を作りたいがどうやったらいいかという製品開発相談、製造された製品を評価したいがどんな分析方法で評価したら良いかといった試験に関する相談、紙にいろんな特徴を付与したい場合にどうしたらできるかという技術相談、製造の段階でトラブルが発生したり製品に異物が発生したなどのトラブル解決相談などがあります。

 

職員は、全員が元々紙専任の研究者というわけではなく、機械に詳しい人、化学や生物を勉強していた人など様々です。私は化学を専攻していて、センターに入ってから紙の勉強を始めました。紙の専門知識を日々の業務に落とし込みながら、普段のお客様とのやりとりで、技術を向上させ、いろいろな分野に応用できるように努めています。

 

 

 

土佐和紙の製造技術、継承と発展について

高知県には和紙の長い歴史があり、1000年以上前から紙が製造されていたことが古い文献に残っています。そこから発展し、現在は製紙業が非常に盛んになっています。長い歴史の延長線上に現在の製紙メーカーがあるので、メーカーさんがそれぞれさらに発展していってもらいたいという想いがありますし、その元となった手漉き和紙についても引き続き継承され発展していって欲しいと思っています。
ただし、他の伝統産業と同じく、手漉き和紙産業は縮小していて状況は厳しく、紙漉きの後継者をみつけ育てていけるか、良質な原料を確保して生産を続けていけるかなどいろいろな課題があり、生産者さんも悩んでいます。
和紙の魅力的な商品を作って、それを少しでも多くの人に使ってもらうことが、和紙に興味をもつ人を増やし、それが前述の問題を解決する手段や方向性の一つになっていくのではないかと考えています。

楮_煮熟
楮を煮る工程の様子。伝統的な和紙の製法を守り発展させるために、職人と一緒になって日々研究開発に努めています。

 

 

 

千年帳プロジェクトサポーターの役割

千年帳プロジェクトでは、紙漉きと製本を高知県内の事業者さんが主に担当しています。
千年帳プロデューサーの(株)四国遍路の佐藤さんから、品質が良く、オリジナル性のある納経帳・御朱印帳を作りたいと2020年に相談を受け、企画内容が非常におもしろく、ぜひ一緒にやらせてもらいたいと思いました。
紙の製造に関しては、高知県内で品質の良い紙をつくっているという自負がありましたが、商品開発力や販売に関しては力が不足していると日々の業務の中で感じていました。そんな折に、高知県の和紙を使って一緒に製品開発を進めていけないだろうかというお話をいただき、高知県の和紙をいろんな人に使っていただき、興味を持ってもらえる機会にもなると思い、非常に魅力的な取り組みに感じました。

 

まずは、納経帳・御朱印帳の本紙として使用する和紙がどういった和紙が良いのかを調べていかないとわからなかったので、そこからスタートしました。
私は、どういう風に和紙が作られ、どういったところが問題になるかを、日々の研究員の仕事の中で把握していますので、佐藤さんからの要望と和紙の特性や技術的なところを考慮しながら、実際に製造する和紙職人さんとの調整をする役割を担い、開発がスムーズに進められるようにお手伝いをさせていただきました。
厚みがどのくらいであったら墨書きの書き味がよいのか、墨が裏ぬけしないか、また、和紙といってもいろいろな原料があるので、どういった原料を使うのが良いのか、どんな配合をしたら良いのか、作る際の製法もどういった製法でつくるのが適しているのかを探りました。
紙は繊維でできていますが、和紙を作る際には繊維以外に、填料(てんりょう)といって、炭酸カルシウムやパルプなどを細かくした鉱物をすり込んで表面を滑らかにしたり、紙が透けないような不透明感を出す役割のために入れたりする場合がありますので、このあたりの製造材料や工程に関しても検討を重ねました。
それがだいたい決まってきた後は、表紙をどうするか、綴じ糸をどうするか、角裂(かどぎれ)という帳面の角の補強部分をどうするかなど、いろいろな部材の選定や製本方法を、他のメンバーとも一緒に考えていきました。

 

難しかったのは本紙の開発です。紙を薄くすると墨が裏抜けしやすくなってしまう、厚くすると必要以上に帳面の厚みが増してしまうので、最適なところの厚みに調整をしました。
最初は薄めの和紙をつくり、裏抜けをするのを「間紙(あいし)」という、他の納経帳・御朱印帳でよく使われている紙と紙の間に別の紙を挟みこんで裏抜けを防ぐ方法も検討しました。ただ、今回の本紙は国産の良質な原料を使って伝統的な製法で作られた和紙を使うということで進めていましたので、にじみ止めの科学的な加工をした既製品の間紙を入れてしまうと、せっかくの和紙の品質に悪影響を及ぼしたり、帳面の紙の枚数が増えることで厚く重くなってしまうので使い勝手が悪くなったりするので、この方法はやめて、書入れをするページに都度下敷きを挟む方法を採用しました。
このように、最終的により高い品質で使いやすい帳面にするための試行錯誤しながら作っていったことが、一番苦労したところです。

裁断工程_有吉正明
研究員としての専門的な知見を活かして、試作開発の各種調整や分析、制作工程の立案サポートなどを担いました。

 

 

 

千年帳を使う人に伝えたい想い

千年帳は、御朱印を納める納経帳・御朱印帳です。人それぞれさまざまな思いでお遍路や神社仏閣をまわられるので、大切な一生ものになるでしょう。長い期間大切に使う納経帳・御朱印帳には、いつまでも持ち続けられる保存性の良いもの、質の高いものを選んでいただくのが非常に理にかなっていると思います。千年帳は、昔ながらの伝統的な製法で作っていますので、同じように長い歴史をもつお遍路をまわられる人にも、とても適した品になっていると感じています。

 

一口に和紙と言ってもいろいろなものがあります。原料は国産のものや外国産のもの、製法に関しても昔ながらの伝統的な製法で作るものもあれば、強めの薬品を使って手間を省いて安価になるように作られるものもあります。どれが良くてどれが悪いというものではなく、実際に使用される人が何を重視するかによって向き不向きがあります。
高知県内で製造される土佐和紙も、伝統的な製法で作られているものもあれば、それぞれの使用者の用途に合わせて作られているものもあり、非常に多岐にわたっていて、一概に「土佐和紙とはこう」とは言えません。

 

今回の千年帳に使っている本紙に関しては、長い期間使っていただくことを考えて作っており、納経帳・御朱印帳に非常に向いている和紙であると言えます。2種類あって、ひとつは楮(こうぞ)をメインの原料、もうひとつは三椏(みつまた)がメイン原料で、昔から和紙の材料として使われてきた材料で、しかも国内産の品質の良いものです。それぞれの原料に合わせて製法も変えて、原料の特徴を最大限に活かした良質な和紙になるように工夫していますので、自信をもっておすすめできます。

 

 

また、製品を開発している期間に、(株)四国遍路さんの本業であるツーリズムとの連携もやってみたいね、という話もしました。
例えば、土佐手漉和紙の原料を作っているところをお遍路で四国をまわられている途中に訪問する、千年帳を注文する人が紙漉き工房を訪れ紙漉き体験をしていただき、ご自身で漉いた紙を千年帳に綴じて使ってもらう、など、製造現場を訪れる旅行と組み合わせられたらおもしろいねという話をしました。それが叶うとこの千年帳が自分だけのモノという愛着がさらに特別になるのではないかと思います。
また、このような伝統産業体験ツーリズムが実現したら、この紙はこんなところでこういう人の手によって作られているのかということを知ってもらえる良い機会となり、幅広い地域振興にもつながると思うので、千年帳をきっかけにこれからも活動を発展させていけるようにがんばりたいですね。

 

 

 

※以下リンクの千年帳制作チームの他のメンバーのインタビュー内容もぜひご覧ください。

 

土佐手漉和紙職人・田村寛インタビュー

 

土佐手漉和紙職人・田村亮二インタビュー

 

紙本保存修復士・一宮佳世子インタビュー

 

染匠・大野篤彦インタビュー

 

書道家・廣瀬和美インタビュー

 

千年帳トータルデザイナー・得丸成人インタビュー

 

千年帳プロデューサー・佐藤崇裕インタビュー

 

 

 

関連記事

千年帳バナー 千年帳バナー