【御朱印情報】岡山県「吉備津神社」の「三備一宮」と記される伝統的な御朱印

岡山県岡山市北区にある「吉備津神社」は、昔話「桃太郎」のモデルといわれる大吉備津彦命を祀り、備中国一宮として長く信仰されている神社です。地域の中心的な存在であったことを示す「三備一宮」の朱印がおされる伝統的なデザインの御朱印のほか、限定の多彩な御朱印も授与されています。

大吉備津彦命を祀る「吉備津神社」

岡山県岡山市北区にある「吉備津神社(きびつじんじゃ)」は、古代の皇族である大吉備津彦命(おおきびつひこのみこと)を主祭神として祀り、大吉備津彦命の一族9柱を配祀し、備中国(びっちゅうのくに)の一宮として長く信仰されている神社です。

大吉備津彦命は第7代孝霊天皇(こうれいてんのう)の第三皇子で、崇神天皇10年(187年)に四道将軍の1人として山陽道に派遣され、弟の若日子建吉備津彦命(わかひこたけきびつひこのみこと)と吉備を平定したと伝わっています。その子孫が吉備の国造となり、古代豪族の吉備臣になったとされています。
吉備中山の麓の茅葺宮(かやぶきのみや)に住んだ大吉備津彦命は、281歳で亡くなって山頂に葬られたといわれています。吉備中山は古来から神体山として信仰されていたと考えられていて、現在でも多くの古墳や古代祭祀遺跡が残り、中央の茶臼山山頂には大吉備津彦命の墓と治定されている墳丘長120mの前方後円墳があります。
吉備津神社は、大吉備津彦命の子孫が大吉備津彦命を祖神をして祀るために、吉備中山の麓に社殿を造営したことが起源と伝わっています。

大吉備津彦命に関係する神話として「吉備津彦の温羅(うら)退治」が有名です。
古代の吉備に温羅という鬼がいて、鬼城山を居城として村人を襲い、悪事を重ねていました。そこで、大和の王が吉備津彦に温羅を退治するよう命じました。吉備津彦命は、吉備の中山に陣を構え、巨石の楯を築き守りを固め、一方、温羅も城から弓矢で迎え撃ちます。そして激しい戦いの末、傷を負った温羅は鯉に化けて逃走し、吉備津彦は鵜に変身して温羅を捕まえ退治しました。

有名な昔話「桃太郎」は、この神話がもとになったといわれていて、大吉備津彦命は桃太郎のモデルと考えられています。
吉備津神社には吉備津彦が矢を放ったことに由来する矢立神事や、討ち取られた温羅の首が埋まる釜の鳴音で吉凶を占う鳴釡神事、吉備津彦の凱旋を豪勢なお膳で祝ったといわれる春と秋の七十五膳据神事などが祭事として現代に伝わっています。
※桃太郎に関連する愛知県犬山市の桃太郎神社に関して、以下リンクの記事で紹介されていますので、こちらもぜひご覧ください。

【御朱印情報】愛知県「桃太郎神社」の桃太郎伝説にまつわる御朱印

明治時代から大正時代、昭和時代初期に政治家として活躍し、第29代内閣総理大臣を務めた犬養毅(いぬかいつよし)は、吉備地域の出身で、吉備津彦の温羅退治で、温羅征伐の供をした三随臣の1人である犬飼健命(いぬかいたけるのみこと)が犬養家の遠祖であることから、吉備津神社を特に崇敬していたという逸話も残っています。

「三備一宮」と記される伝統的な御朱印

吉備津神社では、基本の御朱印の他、神事にちなんだ御朱印や季節や祭事に関係する期間限定御朱印など、複数のデザインの御朱印が、本殿近くの受付所で授与されていました。

基本の御朱印は、「三備一宮」「社名印」の朱印に、「奉拝」「吉備津神社」「参拝日付」の墨書きが書き入れられる、伝統的でシンプルなデザインです。巫女さんが受付と朱印をおしてくださったあとに、神職さんが丁寧に墨書きをしてくださり、初穂料は300円でした。

吉備津神社は現在は備中国一宮ですが、朱印には「三備一宮」と記されています。
持統天皇3年(689年)の飛鳥浄御原令により吉備国が備前国(びぜんのくに)、備中国、備後国(びんごのくに)の三国に分割されました。元々は吉備国総鎮守であった吉備津神社が備中国一宮とされ、備前国一宮として吉備中山の北東側山麓に吉備津彦神社(きびつひこじんじゃ)、備後国一宮として現在の広島県福山市にある吉備津神社(きびつじんじゃ)に分霊されたことから、元宮である吉備津神社は「三備一宮」を名のっているそうです。
※備前国一宮の吉備津彦神社に関して、以下リンクの記事でご紹介していますので、こちらもぜひご覧ください。

【御朱印情報】岡山県「吉備津彦神社」の備前国一宮の「桃太郎」にちなんだ御朱印

この御朱印は、株式会社四国遍路が制作・販売しているオーダーメイド納経帳・御朱印帳「千年帳」に書いていただきました。
本紙は、高知県で伝統的に受け継がれている「土佐和紙」の中でも、現地で栽培・収穫された楮(こうぞ)という植物原料を使い、伝統的な製法で職人さんが1枚1枚手漉きした「土佐手漉和紙」です。繊細な書体の特に勢いよく書かれた横のラインやはねの部分に絶妙なかすれが出ていて、土佐手漉和紙の凹凸のある表面感と相まって、動きを感じる美しさに仕上がっていると思います。
※千年帳の本紙に関しては、以下リンクで詳しく紹介されていますので、ご参照ください。

千年帳とは：本紙

国宝本殿拝殿再建600年奉祝記念特別御朱印

基本の御朱印以外に、何種類か授与されていたアート御朱印のうち、今回私は「国宝本殿拝殿再建600年奉祝記念特別御朱印」もいただきました。

吉備津神社の本殿・拝殿は、室町時代の明徳元年(1390年)に後光厳天皇(ごこうごんてんのう)の命を受けた室町幕府3代将軍・足利義満(あしかがよしみつ)が造営を開始し、応永32年(1425年)に再建された、長い歴史があるとともに日本屈指の大規模社殿で、国宝に指定されているたいへん貴重な建造物です。
比翼入母屋造(ひよくいりもやづくり)という、入母屋造の屋根を前後に2つ並べた全国唯一の様式であることから「吉備津造」とも称されています。

令和7年(2025年)が再建から600年目の節目の年にあたることから、いろいろな記念行事が企画されていて、その一環で上の写真の特別御朱印も期間限定で授与されていました。

私が参拝した際には、このほかにも複数種類の御朱印が授与されていて、吉備津神社では定期的に限定御朱印が授与されているようなので、参拝時にはどのような御朱印が授与されているか、ぜひチェックしてみてください。

吉備津神社は、吉備国総鎮守・三備一宮として長く崇敬される岡山県を代表する神社のひとつです。国宝に指定されている本殿・拝殿をはじめ、立派な建造物が多数あり、神社周辺には古代遺跡も複数のこっていて、じっくり時間をかけて拝観するのがおすすめです。参拝の証には長い歴史を物語る伝統的でシンプルな御朱印をいただき、限定で授与されている多彩な御朱印もぜひチェックしてみてください。

※同じ岡山市北区にある岡山県を代表する寺院である最上稲荷に関して、以下リンクの記事でご紹介していますので、こちらもぜひご覧ください。

【御朱印情報】岡山県「最上稲荷」の日蓮宗ならではの御朱印と御首題

ライター：千年帳編集部
オーダーメイド納経帳・御朱印帳「千年帳」の商品詳細情報や魅力、こだわりなどを発信しています。千年帳を携えて寺社を参拝し、実際に拝受した御朱印の情報など、御朱印巡り好きの人のためのお役立ち情報もお届けします。