- 【御朱印帳】土佐手漉和紙「朝光」 小判 38ページ 楮紙 白米×淡黄蘗
- ¥11,880
奈良県大和郡山市にある「矢田寺」は、天武天皇の勅願により開かれた高野山真言宗の古刹で、あじさいの名所として知られています。4つの僧坊で、地獄で人々の苦しみを身代わりに受ける「代受苦地蔵」の慈悲が込められた御朱印のほか、あじさいの季節限定御朱印などが授与されています。
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奈良県大和郡山市、西部の矢田丘陵の中腹にある「矢田寺(やたでら)」は、正式には「金剛山寺(こんごうせんじ)」と称する高野山真言宗の寺院です。
飛鳥時代の天皇の後継者を争った古代日本最大の内乱「壬申の乱(じんしんのらん)」に際して、大海人皇子(おおあまのおうじ、後の第40代・天武天皇(てんむてんのう))が矢田山で戦勝祈願をして勝利したことがきっかけで、天皇即位後に智通僧正(ちつうそうじょう)に命じて十一面観音と吉祥天女を祀る金剛山寺が開創されました。
時代が進んで、平安時代初期の弘仁年間(810〜824年)に満米上人(まんまいしょうにん)によって地蔵菩薩が安置されると、地蔵信仰の中心地となり、隆盛していきます。
多くの僧坊を有する大寺院でしたが、戦乱などにより焼失し、現在は北僧坊(きたそうぼう)・大門坊(だいもんぼう)・念仏院(ねんぶついん)・南僧坊(みなみそうぼう)の4つの僧坊を総称して「矢田寺」と呼んでいます。高野山真言宗の別格本山として広く信仰をあつめ、「矢田のお地蔵さん」とも呼ばれて親しまれています。

矢田寺の境内には約60種10,000株のあじさいが植えられていて、「あじさい寺」の別称もあります。御本尊の地蔵菩薩が手にする宝珠の形に、丸く房状に集まるあじさいの花が似ていることから、矢田寺とあじさいの深いご縁が生まれました。5月下旬から7月上旬があじさいの見頃で、特に6月1~30日は本堂特別拝観・閻魔堂特別開扉が行われ、普段は非公開の場所で仏様と特別なご縁を結び、あじさいの花が咲き誇る景観を楽しむたくさんの参拝者でにぎわいます。なお、普段は入山料は無料ですが、あじさいシーズンには特別入山料(大人700円・小学生300円)が必要で、本堂特別拝観をする場合は別途500円かかります。


矢田寺では、4つの僧坊(北僧坊・大門坊・念仏院・南僧坊)で、それぞれに複数種類の御朱印が授与されています。
御本尊である地蔵菩薩の御朱印は、4つの僧坊すべてで授与されており、少しずつデザインが異なります。以前は本堂でも授与されていましたが、現在は4つの僧坊での授与のみの対応になっています。
また、それぞれの僧坊に祀られている仏様のオリジナルの御朱印もあります。北僧坊(虚空蔵菩薩、不動明王→拝受には事前連絡が必要)、南僧坊(毘沙門天、閻魔大王)、大門坊(摩尼殿=本堂の地蔵菩薩とは別の地蔵菩薩、大金剛=閻魔大王)、念仏院(大悲殿=十一面観音菩薩)とです。
また、あじさいのシーズン中には、挿絵・切り絵・刺繍などであじさいの花があしらわれた季節限定御朱印も授与されていて、4つの僧坊ごとに趣向を凝らしたデザインになっています。季節限定御朱印は、数量限定での授与になっていますので、拝受を希望される際はあじさいシーズンの早い時期に参拝されることをおすすめします。
私は、御本尊・地蔵菩薩の御朱印を、北僧坊と南僧坊でいただきました。
北僧坊の地蔵菩薩の御朱印は、右に「奉拝」、中央に「地蔵尊」、左に「矢田山金剛山寺」の墨書きに、右上に「天武天皇勅願寺」、中央に「地蔵菩薩を表すカの梵字」、左下に「矢田山金剛山寺」の朱印、右下に「参拝日付」スタンプがおされるデザインでした。
「天武天皇勅願寺」の表記は、矢田寺が約1,300年前に天武天皇の勅願により開かれた格式高い寺院であることを表しています。

南僧坊の地蔵菩薩の御朱印は、右に「奉拝」「参拝日付」、中央に「地蔵尊」、左に「矢田山金剛山寺」の墨書きに、右上に「大和十三佛(やまとじゅうさんぶつ)第五番」、中央に「地蔵菩薩を表すカの梵字」、左下に「矢田山金剛山寺」の朱印がおされるデザインでした。
「大和十三佛」は、初七日から三十三回忌までの追善供養を司る13の仏様を祀る、奈良県内に点在する13の寺院の霊場巡礼です。昭和時代後期に開創された比較的新しい霊場ですが、奈良の歴史ある名刹を巡りながら、仏教文化や信仰に触れられることから、多くの参拝者が巡拝しています。矢田寺は地蔵菩薩を祀る第5番札所であることが御朱印に記されています。

矢田寺の御本尊は、創建当初は十一面観音菩薩でしたが、平安時代に満米上人によって地蔵菩薩が安置されて以来、地蔵菩薩が中心となりました。その由来は「矢田地蔵縁起」で以下のように語られています。なお、矢田地蔵縁起の原本は現在は奈良国立博物館に寄託され、本堂内陣ではそのレプリカが展示されています。
閻魔大王は人々を裁くことに深く心を痛めており、公家・小野篁(おののたかむら)に相談したところ、紹介された矢田寺の満米上人は見事に閻魔大王の悩みを取り除き、お礼に「地獄巡り」をすることができました。阿鼻地獄に向かうと、猛火の中で衆生を救う地蔵菩薩がおり、「現世に戻ったら、人々に私と縁を結ぶよう勧めなさい。そうすれば救ってあげられます。」と話しました。地獄から帰った満米上人がその御姿を彫ろうとしますがうまくいかなかった際に、4人の翁(春日四社明神)が現れ、御姿そのままに彫り上げ、この像を御本尊として祀りました。
春日四社明神が地蔵菩薩を彫り終えて、この地を去る際に飛び立った場所が「飛び立ちの霊石」、帰還を見送ったのが「見送り地蔵」、春日四社明神を祀ったのが「春日神社」で、3景がすべて残され、一つの縁起でつながっています。境内には閻魔堂もあり、閻魔大王が祀られ、あじさいシーズン中は特別開扉されます。
※春日四社明神が帰還した先だと伝わる春日大社に関して、以下リンクの記事で紹介されていますので、こちらもぜひご覧ください。
【御朱印情報】奈良県「春日大社」の千年帳にいただいた「春日神」とご縁を結ぶ伝統的な御朱印



一般的な地蔵菩薩は右手に錫杖、左手に宝珠を持ちますが、矢田寺の地蔵菩薩は錫杖を持っておらず、右手は胸の前で親指と人差し指を丸めた阿弥陀如来の来迎印を結んでいます。この形態は全国的にも珍しく「矢田型地蔵」と呼ばれており、地蔵菩薩と阿弥陀如来の力を兼ね備えているといわれています。
本堂内陣の表に地蔵菩薩、裏に満米上人が試作した試地蔵菩薩(こころみのじぞうぼさつ)が祀られ、最初の御本尊である十一面観音菩薩や吉祥天も安置されています。

矢田寺の地蔵菩薩は、衆生の苦しみを身代わりに受ける「代受苦地蔵(だいじゅくじぞう)」として信仰されていて、その大きな御霊験が地蔵尊の御朱印に込められているように感じました。
北僧坊では、季節限定の御朱印もいただきました。
見開きタイプで、右側に虚空蔵菩薩とあじさいの挿絵、左側の右に「令和8年みなつき」、中央に「虚空蔵菩薩」、左に「矢田寺北僧坊」の墨書き、右上に「豊臣秀長(とよとみひでなが)公御遺蹟」、中央に「航空像菩薩を表すタラークの梵字」、左下に「別當北僧坊」の朱印がおされるデザインでした。

虚空蔵菩薩は天を司る智慧の仏、地蔵菩薩は大地を司る慈悲の仏として対をなすと考えられています。十三仏の13番目の三十三回忌を担うことからも、地蔵菩薩との縁が非常に深い仏様です。御朱印のおだやかな表情と凛とした墨書きが、虚空蔵菩薩の深い智慧を表しているように感じました。
豊臣秀長は、天下人・豊臣秀吉(とよとみひでよし)の弟で、「内々の儀は宗易(そうえき、茶人・千利休(せんのりきゅう)のこと)、公儀の事は宰相(さいしょう、豊臣秀長のこと)」という言葉がのこっているように、秀吉の出世・天下統一・政権を支えた人物として知られています。
御朱印に「豊臣秀長公御遺跡」と記されるのは、天正13年(1585年)に大和郡山城主として入城した秀長が、城内の書院・茶室を北僧坊へ移築した史実に由来しています。令和8年(2026年)のNHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」では、秀長が主人公として描かれており、矢田寺を含む大和郡山市が秀長ゆかりの地としてたいへん注目されています。
矢田寺は、1,300年以上にわたって人々の苦しみに寄り添ってきた大和の古刹です。「現世に戻ったら私と縁を結ぶよう勧めなさい」という地蔵菩薩の言葉が、境内に息づき、御朱印にも慈悲が込められているように感じました。名物になっているあじさいが咲き誇る季節に、ぜひ矢田のお地蔵さんとご縁を結んでみてください。
ライター:さすらいのライターCulchan(カルチャン)
土地の持つエネルギーや記憶を探し求めて、寺社巡礼や御朱印拝受を行う日々を送っています。日本の自然や神仏、文化との邂逅が活力源になっていて、ライティングを通して日本の歴史や文化を次世代へ語り継ぎたいと思っています。
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