四国の職人が心に響く手仕事で仕上げる
オーダーメイド納経帳・御朱印帳「千年帳」

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染匠・大野篤彦インタビュー

オーダーメイド納経帳・御朱印帳「千年帳」の表紙用記事の開発・制作を担当している染匠・大野篤彦の伝統技術を引き継ぐ想い、讃岐のり染・讃岐正藍染の技法や特徴、千年帳の開発・制作の経緯などをインタビューしました。

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千年帳制作チーム

オーダーメイド納経帳・御朱印帳「千年帳」は、それぞれの専門技術を持つ四国の職人が、最高品質の納経帳・御朱印帳を仕上げるために長い期間をかけて試行錯誤し、開発した商品です。
四国内を拠点に活動する様々な分野の専門家が集まって結成された千年帳制作チームのメンバーは、現在の活動分野に関わることになったルーツやストーリーがそれぞれに存在し、活動分野へのこだわりや想いをもって取り組んでいます。
活動状況や千年帳にかける想いなどをぜひ広く知っていただきたく、メンバーが自分の声でお伝えするべく、インタビュー動画を撮影しました。

千年帳制作チーム
千年帳のメイン素材である「土佐手漉和紙」が生み出される高知県の仁淀川にかかる沈下橋で、千年帳制作チームのメンバーを撮影しました。

 

 

染匠・大野篤彦

本記事では、千年帳の表紙用記事の開発・制作を担当している染匠・大野篤彦(おおのあつひこ)のインタビュー内容をまとめていますので、伝統技術を引き継ぐ想い、讃岐のり染・讃岐正藍染の技法や特徴、千年帳の開発・制作の経緯などをぜひご一読ください。
インタビューの様子は、以下の動画でも閲覧可能ですので、あわせてご覧ください。

 

 

 

 

「染匠」の仕事

染匠(せんしょう)とは、染め物をする職人のことをいいます。香川県琴平町にある染匠 吉野屋で、主に「讃岐のり染*」という技法で、のれん、のぼり、獅子舞の油単(ゆたん)*など、日本の伝統的な染め物製品全般を制作することを生業としています。
地元の琴平では「四国こんぴら大芝居*」の興行があるのですが、その第1回目からのぼりを染めさせていただいています。

 

現代では機械で簡単にデータを作って、出力して完成というものが多いのですが、その中にあって、手作りの良さを全面的に出した染め物をつくることを目指しています。

 

*讃岐のり染
もち米からつくる防染のための糊を布に置き、彩色の染料が混ざらないようにすることで模様や文字を染めわける香川県の伝統的工芸品

 

*油単
獅子舞の胴の布地の部分

 

*四国こんぴら大芝居
香川県琴平町に現存する日本最古の芝居小屋で国指定重要文化財「旧金毘羅大芝居(通称:金丸座)」で開催される歌舞伎興行。毎回スター役者が揃うことでも有名。昭和60年から毎年開催されていたが、令和3、4、5年度は新型コロナ感染症により休演

金毘羅大芝居のぼり_讃岐のり染
歌舞伎興行を盛り上げる色鮮やかなのぼりを伝統的な讃岐のり染の手法で制作しています。

 

 

 

「讃岐正藍染」の魅力とこだわり

数年前から新たな取り組みとして藍染にもチャレンジしています。江戸時代のベーシックな染め物技法といえば藍染で、琴平にもいくつかの藍染工房があった記録が残っていますが、時代の流れで現在はなくなってしまいました。
伝統的な技術・文化・産業を復活させようと、染料の原料となる藍の栽培から地元で行い、染色工程を経て、独自の製品にまで仕上げる「讃岐正藍染 藍毎(さぬきしょうあいぞめ あいごと)」というブランドを立ち上げました。

 

藍染にも色々な手法があり、僕なりに調べた結果、自分の染め物には「正藍染」という手法が最適だと思いました。しっかり色がついて色落ちもしないし色移りもない、そういう製品を作れるのが正藍染だったのです。
僕の作る正藍染の染め液は、天然素材だけで化学的なモノは一切入っていません。身体にも優しく、藍染特有の抗菌作用もあるので、特に身に着けてもらうモノに関して自信があります。

 

正藍染の染料の原料は、植物の蓼藍(たであい)*です。蓼藍と灰汁(あく)とふすまと貝灰で染め液を作っています。
蒅(すくも)*は、最初の年は僕が個人的に作りましたが、あとは農家さんにお任せし、協力しながら作っていて、そこから仕入れています。
僕が地元で栽培した蓼藍にこだわるのは「何か琴平のブランドになるような動き方ができないか」と考えたからです。それにはやはり藍染の原料づくりを琴平の農家さんと一緒にするのが一番良いと思い、現在は一緒に取り組んでいます。その農家さんも、藍の栽培も蒅づくりもしたことのない状態から始めました。まだ確立まで至っていませんが、ゆくゆくは「琴平=藍」という原料から製品まで一貫生産の地域ブランドにしたいと思っています。

 

藍染の染め液を作るときに、木灰からとる灰汁が必要なのですが、灰汁を作るためには水道水ではだめなのです。そこで井戸を掘りました。その地下水を使い、堅木からつくった灰で灰汁を取る。そこが染め液を作る一番重要な工程です。
藍染は自分が思うような色になるまで染め重ねることが大事で、しっかり、じっくり、何回も、何回も染め、天日に干して作り上げていくのが正藍染の特徴です。染め液は生き物を育てているのと同じです。いくつか染め液があるのですが、その日そのタイミングの藍や微生物の調子がそれぞれ違うので、その管理が難しいところであり、楽しくもあるところです。毎日蓋を開けて匂いをかいでみて、液のぬる感(ぬめり具合)を手で触って感じて、どの栄養を与えようか、という管理の仕方を毎日しているので、何か…楽しいですよね。

正藍染の仕上がりは、青が澄んでいることが魅力です。
きれいな青が正藍染の特徴なので、きれいな青を目指して染めています。生地に藍をしっかりどんどん付着させることによって、生地も丈夫になりますし、抗菌効果もありますので、身に着けてもらうモノを藍染にするのはすごく良いと思います。
ハンドメイドはまったく同じものはできないので、ひとつひとつ表情やできばえが違うところを製品の味として感じてもらえたらと思います。

 

*蓼藍(たであい)
蓼科の一年草で、奈良時代から藍染の染料に使われてきた

 

*蒅(すくも)
蓼藍の葉を乾燥、発酵、熟成させて作った染料

染液_讃岐正藍染
複数の染め液の調子を日々確認しながら育てていくのが重要な仕事です。

 

 

 

染匠・大野篤彦のルーツ

「染匠吉野家」は大正元年(1912年)創業で、僕で4代目になります。
小さい頃から祖父が歌舞伎ののぼりを染めているのを見てきました。色使いなどがすごく派手で、その時から「おもしろそうな仕事だな。将来はこの仕事をしたいな」と思っていました。小学生の低学年くらいから染め物の現場を見てきたので、自然に家業を継ぐ流れになりました。
昔は染め物の仕事がすごく多くあったので、染め場いっぱいに染めたのぼりや染める前のものなどがあり、それらを「楽しそうやなぁ」と思って眺めていました。その時は、デザインよりは配色などに刺激を受けていましたね。

 

4代目としては、伝統的な技術を後世にどう残していくかが課題ですが、技術を残していくためにもいろいろな新しいコトに挑戦していこうと思っています。
これまでは、長い間お付き合いがある地域に密着した仕事、旧来のスタイルの製品が多かったのですが、これからは、あの人に頼むとこういう作品になるのか、とか、勢いのある染め物になるのだな、といったオリジナリティが染め物にも求められるのではないかと思っています。そのあたりをふまえて、創っていきたいですね。

 

 

 

千年帳の表紙開発・制作にあたって重視したポイント

千年帳では、表紙用の染物生地の開発・制作を担当しています。
納経帳・御朱印帳を手に取って目に入る「面」というのは、普段制作している製品に比べると小さいものです。その小さい中に染め物らしさ、讃岐のり染らしさ、讃岐正藍染らしさをどう表現するかにこだわり、制作しています。

 

讃岐正藍染の表紙は、グラデーションで四国の空と海を表現しています。
正藍染ならではの藍の微妙な濃淡の染めわけをお楽しみいただければうれしいです。

 

讃岐のり染の竹と雀の図案は、昔、ひいじいさんやじいさんの代で伊勢の型紙を仕入れ、ずっと置いておいたモノ、また使っていたモノがたくさんある中から、今回の千年帳に合うと思うデザインを見つけて復刻させました。
古い伊勢の型紙は200~300種類くらい保管していると思うので、その中からいろいろ良いものをピックアップして、今後も千年帳の注文に似合うものを制作していこうと思っています。

染色作業_讃岐正藍染
何度も染め重ねて、色の濃さやグラデーションの表現を作り上げていきます。

 

 

 

千年帳を使う人に伝えたい想い

香川県の琴平に「讃岐のり染」という昔ながらの染色技術で染め物をつくっているところがある、また、「讃岐正藍染」という新しい取り組みが始まっているということを、千年帳の表紙を通して知っていただきたいと思います。

 

千年帳を使うというのは、一生に1回あるかないかという希少な機会だと思うので、そういうときにうちで作った表紙と一緒にいろいろなところをまわっていただけるというのは、非常に光栄なことです。しっかり制作していきます。
千年帳は長い期間使うモノなので、愛着を持ってもらいたい品物です。天然原料でつくる伝統工芸品ならではの経年変化もお楽しみいただきたいです。

 

 

※以下リンクの千年帳制作チームの他のメンバーのインタビュー内容もぜひご覧ください。

 

土佐手漉和紙職人・田村寛インタビュー

 

土佐手漉和紙職人・田村亮二インタビュー

 

紙本保存修復士・一宮佳世子インタビュー

 

書道家・廣瀬和美インタビュー

 

千年帳プロジェクトサポーター・有吉正明インタビュー

 

千年帳トータルデザイナー・得丸成人インタビュー

 

千年帳プロデューサー・佐藤崇裕インタビュー

 

 

 

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