四国の職人が心に響く手仕事で仕上げる
オーダーメイド納経帳・御朱印帳「千年帳」

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土佐手漉和紙職人・田村寛インタビュー

オーダーメイド納経帳・御朱印帳「千年帳」の本紙・表紙に使用している土佐手漉和紙の職人・田村寛の土佐和紙に対するこだわりや伝統技術を継承する想い、千年帳の開発・制作の経緯などをインタビューしました。

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千年帳制作チーム

オーダーメイド納経帳・御朱印帳「千年帳」は、それぞれの専門技術を持つ四国の職人が、最高品質の納経帳・御朱印帳を仕上げるために長い期間をかけて試行錯誤し、開発した商品です。
四国内を拠点に活動する様々な分野の専門家が集まって結成された千年帳制作チームのメンバーは、現在の活動分野に関わることになったルーツやストーリーがそれぞれに存在し、活動分野へのこだわりや想いをもって取り組んでいます。
活動状況や千年帳にかける想いなどをぜひ広く知っていただきたく、メンバーが自分の声でお伝えするべく、インタビュー動画を撮影しました。

千年帳制作チーム
千年帳のメイン素材である「土佐手漉和紙」が生み出される高知県の仁淀川にかかる沈下橋で、千年帳制作チームのメンバーを撮影しました。

 

土佐手漉和紙職人・田村寛

本記事では、千年帳の本紙・表紙に使用している土佐手漉和紙の職人・田村寛(たむらひろし)のインタビュー内容をまとめていますので、土佐和紙に対するこだわりや伝統技術を継承する想い、千年帳の開発・制作の経緯などをぜひご一読ください。
インタビューの様子は、以下の動画でも閲覧可能ですので、あわせてご覧ください。

 

 

 

高知県の伝統産業「土佐和紙」

高知県での和紙づくりは1000年以上の歴史があると伝わっています。
日本各地に和紙の産地はありますが、高知県の土佐和紙の強みは、紙の原料の栽培から道具づくり、紙漉きの技術も含め、全般にわたって紙の要素がひとつのエリアに集中していることだと思います。

 

また、高知県が紙生産に有利な点がもう一つ、水が豊富にあることもあげられます。私の工房も目の前に仁淀川(によどがわ)という大きな川があり、雨も多く、水質も軟水で良いとされています。
一方、高温多湿という欠点もあります。あまりに気温や湿度が高くなると紙づくりにはデメリットになりますが、紙を漉く時期を寒い時期に限定したり、夏場には違う作業をしたりと工夫しながら、紙漉き職人たちはいろいろな紙を作っています。

仁淀川
2010年には水質全国1位にもなり、水面が青く美しい「仁淀ブルー」と呼ばれる淵や滝壺もある仁淀川。

 

 

土佐手漉和紙の原料

私は以前は100種類以上の紙を作っていましたが、現在は主に高知県内で生産される楮(こうぞ)*を中心とした紙づくりで、約20種類に絞って作っています。

 

良い紙を作るのには良い原料を調達することは欠かせませんが、日本国内で楮の栽培農家がどんどん減っているのが課題です。紙の需要もそうですが、それ以上に原料の生産が減り、高知県でも楮栽培農家が年々減少している状況です。
原料の入手量と質を確保するために、本来は紙を漉く職人である私が楮の栽培にも関わり、どのように楮ができていくのか、農家の人や加工する人とも交流しながら楮づくりを学び、楮を確保しています。

 

千年帳の本紙に使用しているもうひとつのメイン原料である三椏(みつまた)*については、高知県内では栽培する農家がなくなってしまい、楮に比べても入手が難しくなっています。
現在使っている三椏の在庫は、高知県内で以前に生産していた農家さんからゆずってもらったもので、この在庫分を使い切ると高知県内で新たに入手するのは困難です。一部の紙漉き職人が自分のところで使うために少しだけ作っているぐらいです。
四国内でみると、徳島県ではまだ生産農家があるので、現在の在庫分がなくなったらそちらからの仕入れも検討しています。

 

*楮(こうぞ)
5~20㎜の長く丈夫な繊維がとれ、絡みやすいので薄くても丈夫な紙が漉ける。

 

*三椏(みつまた)
楮に比べて1本の繊維が短く、光沢のある滑らかな紙肌に仕上がる。

楮収穫
一本一本手作業で刈り取る楮の収穫や、川沿いや山がちな土地からの運搬作業などは重労働で、農家の高齢化により担い手不足が深刻になっています。

 

 

土佐手漉和紙職人・田村寛のルーツ

私は実家が寺で、今も紙の仕事と寺の仕事を半分半分でやっています。
私が紙漉きを始めたのは25歳の時でした。伝統産業的なものや手作りのものに興味があり、地元高知県でできることを探していた時に、タイミングよくいの町の土佐和紙工芸村が研修制度を設けていました。その時点では紙のことは何も知りませんでしたが、数ヶ月やってみるとおもしろく、仕事にもできると感じ、土佐市の手漉和紙工房で勉強をしながら紙づくりを学びました。

 

その後独立し、下請けやほかの工房に教えてもらいながら紙漉きを続けました。技法は、高知県内の先輩方の培ってきた技法をベースに、多様な技法や原料の処理の方法を採り入れた紙づくりをしています。いろいろな技術に挑戦することは難しさがありつつも、非常におもしろいところでもあります。原料も国産だけではなく、外国産の原料や木材パルプを使った紙も作っていたのですが、地元の原料を使った紙を作りたいという想いが強く、今は地元の原料を中心とした紙づくりをしています。

 

ユーザーさんに実際に使ってもらって「あの紙は良かった」と言ってもらえたときはとてもに嬉しいですね。ただ、いつも良い評価をもらえるわけではなく、ちょっとだめだった、あそこをこうして欲しい、ということもあります。それはまた次への課題となり、やり甲斐のあるところです。

 

 

土佐手漉和紙の伝統と技術について感じていること

土佐手漉和紙は基本的に全て手作業なので、何人かの紙漉き職人が全く同じような工程、同じ原料で、同じような紙を作ったとしても、できあがりは結構変わってきます。それくらい手作りの紙は作る職人によって違いがでてくるのです。
作り手それぞれの考えがあり、同じような工程でも、この人はすごく丁寧、この人はすごくスピードが速い、この人はこういうところを考えてやっている、などの違いが積み重なり、仕上がりには個人の個性が出てきます。

 

なにが「伝統」かとははっきり言えませんが、「技術」に関しては長い時間をかけて今のカタチになっていて、それも今がベストではなく、実はもっと昔のほうがベストだった技術もあると思います。技術というのは時代と共に変わっていくものなので、私はそれ自体を守るという考えはなく、その時代に合わせて変えて良いと考えています。
ただ、昔からの人がやってきた技術の中には、どうしてそういう風にやってきたかという「考え方」があるので、その技術になった考え方を引き継げるようなカタチで、新しいものができたらいいと思っています。

 

私にとっての考え方というのは、基本的にもともと私たちの近くにあった地元の原料を使って作る紙なので、原料となる草木やそれを育む自然をよく理解して、それらを最大限に活かす方法を追求することがベースになっています。そこを大事にしながら、ものづくりを続けられれば、それが伝統になるのかなと思います。
正しいかどうかはわかりませんが、今はそういう風に思って、日々精進しています。

 

また、地元の原料をこれからも使っていきたいので、どんどん減っている楮栽培をなんとか維持し、続けていくことを考えています。
原料の加工の担い手も少なくなってきていますので、いの町吾北地区を中心に、楮栽培農家さんや地区の人と連携し、楮栽培に加えて「へぐり*」という加工をやっていただきつつ、自らも一緒に参加し、勉強することで、なんとか続けていけるようにしたいと思い、細々とではありますが続けています。

 

*へぐり
12月~1月頃に刈り取った楮を蒸し、蒸し上がった楮が温かいうちに樹皮を剥がす。一度天日干しで乾燥させてから、水で戻し、楮の表皮の黒皮を専用の包丁で削り、白皮にする作業を「へぐり」という。手漉和紙を作る工程は多岐にわたり、原料農家のみならず、加工工程の担い手も減少の一途をたどり、人手が足りてない現状がある。

へぐり
へぐりもとても地道な手作業で、昔はこの作業を内職で担う人が大勢いました。

 

 

千年帳本紙を開発するにあたって重視したポイント

最初に(株)四国遍路の佐藤さんから、高知県立紙産業技術センターの有吉さんを通して、「四国のお遍路に使っていただく納経帳の紙」を漉いてほしいと相談を受けました。日本の巡礼文化の本場である四国の原料を使うという前提があり、地元高知県内の楮や三椏を使った紙で、納経帳の本紙の用途として品質が高いものができるかどうかがポイントでした。

 

納経帳に使う紙なので、墨でかいたり、朱印をおしたりすることに適しているのはどういう紙なのかということを考え、試作を繰り返しました。お遍路をまわる人は納経帳にも想いを込めてまわられ、使用する期間が長く、まわり終えたあとも長く保管されるものなので、何年経っても変わらない品質で保存できる、というところに重点をおき、さらに、墨書き・朱印の書き手がきれいに書けて、御朱印がきれいに仕上がるということも重視して開発しました。

 

今回開発した本紙は、楮をメイン素材にした紙と、三椏をメイン素材にした紙の2種類ありますが、それぞれの質感に特徴があり、洋紙に比べて質感や1枚1枚の個性の違いがわかりやすい見た目のおもしろさがあります。ぱっと見た目の色も、楮紙はあたたかい生成り、三椏紙はあえて原料の素朴な色を残した茶色味がかった紙に仕上げました。
墨書きの際の書き味も、楮紙はざっくりした紙肌で墨の染み込みがよくダイナミックな表現に適していて、三椏紙は表面がツルッとしているので筆の滑りがよく、細い字などの繊細な表現が可能です。
手漉和紙らしい個性や、あえて2種類の紙の違いを強調できるように注意を払いながら開発したので、和紙の質感とそれに書かれた御朱印の仕上がりの特徴を楽しんでもらいたいです。

紙漉き_田村寛
手漉き工程では、微妙な手加減で、紙の厚さや質感を調整していきます。

 

 

千年帳を使う人に伝えたい想い

千年帳は、お遍路やいろいろな神社やお寺をまわって御朱印を集めたり、また、納経帳や御朱印帳としてだけではなく別の用途で、大事なものを書いたり貼ったりして使われる人もいるかもしれません。いずれにしても大切な記憶に「遺す」ことに使われると思いますので、作る側はできるだけ長くもつようにと、とても丁寧に大事に作っています。
その「大事にしたい」という使う人の気持ちと作る人の気持ちが合わさって「遺っていく」ものになれば良いと思っています。

 

また、その使ったモノがもしかしたら次の世代に引き継がれることもあるかもしれませんし、ぜひそのように世代をこえて長い間使っていただきたいですね。長期間使われることになっても、変わらない品質で、変わらない想いがさらに次の世代の人に伝わるようなモノになっていれば、作り手として一番嬉しいです。

 

 

 

※以下リンクの千年帳制作チームの他のメンバーのインタビュー内容もぜひご覧ください。

 

土佐手漉和紙職人・田村亮二インタビュー

 

紙本保存修復士・一宮佳世子インタビュー

 

染匠・大野篤彦インタビュー

 

書道家・廣瀬和美インタビュー

 

千年帳プロジェクトサポーター・有吉正明インタビュー

 

千年帳トータルデザイナー・得丸成人インタビュー

 

千年帳プロデューサー・佐藤崇裕インタビュー

 

 

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